イエスは、一人の律法学者から「すべての掟の中で最も重要なものは何か」と問われ、「神を愛すること」と「隣人を愛すること」という二つの掟を挙げられました。第一の掟は、申命記からの引用で、「心を尽くし、精神を尽くし、思いを尽くし、力を尽くして神を愛しなさい」というものです。神は、イスラエルを奴隷の地エジプトから救い出し、荒れ野を共に旅し、約束の地へと導かれた愛の神。その神の変わらぬ愛に対する応答として、私たちもまた、全身全霊で神を愛し、み言葉に従って歩むように招かれています。
第二の掟は、「隣人を自分のように愛しなさい」。これはレビ記にある言葉で、本来は同胞に対する愛を意味しましたが、イエスは「善きサマリア人」のたとえを通して、隣人の枠をすべての人に広げられました。隣人愛とは、目の前にいる人の存在と尊厳を大切にし、その人が人間らしく生きられるように配慮することです。神を愛する者は、必ず隣人を愛する者ともなるべきであり、この二つの愛は分かちがたく結びついています。
イエスは律法学者に「あなたは神の国から遠くない」と言われました。それは、正しい理解があっても、実際に愛を生きる者とならなければ神の国には届かないという意味でもあります。今の私たちにも、「行って、あなたも同じようにしなさい」という主の招きが与えられています。愛を知識や理想に留めず、日々の生活の中で実践していきましょう。 〔牧師 細井留美〕