「あなたの信仰があなたを救った」。イエスさまは、決して自分の手柄とはせず、バルティマイの信仰から湧き上がる力を彼自身に知らせました。上着を脱ぎ捨て、躍り上がってイエスのもとに来たバルティマイは、もう以前の彼ではありません。生きる希望を掴んだ新たなバルティマイです。彼自身の信仰・神への信頼が彼を立ち上がらせたのです。そして、彼はイエスについていこうと、決めました。この先の人生をイエスに仕え、多くの仲間と共に生きていこうと自分で決めたのです。今度は、解放されたバルティマイが、苦しむ人々を見て、その声を聴いてその痛みに共感し、イエスさまのもとへ人々を連れていくことになるのでしょう。
勇気を出して、絞り出した「助けて」の声。神を求める声は、神への信頼、イエスさまへの信仰からの叫びでした。それを聞き逃さなかったイエスさまは、彼の願いに応えられました。多くの人々の前で行われたイエスの癒しの業は、癒しの奇跡以上に、まるで体の一部となっていた「上着」を脱ぐかのような、バルティマイの人生の重荷であった偏見や差別からの解放でした。大きな人生の転換点・瞬間でした。
一部始終を見ていた弟子たちや周囲の人々にとっても、差別意識が問われ、悔い改め・方向転換を促される罪からの解放の瞬間となりました。そして、この人々がバルティマイを励まし助け寄り添って、イエスさまのもとへ連れて行きました。神様は、人々を巻き込み、人々を通してみこころをなさるのです。「安心しなさい、立ちなさい、イエスさまがお呼びです」。人は一人では生きていけません。助けあって生きていきます。私たちも、互いに、隣人にイエスさまの言葉を届けていけますように。争いではなく、祈り、助け・励ましあいの連鎖が広がりますように。神の国・神のみこころがこの地になりますように。 〔米本裕見子〕