2021年12月5日 「ぶれない神の計画」 マタイによる福音書1章1~17節

 マタイによる福音書は、イエス・キリストの系図から始まります。通常、系図には男性の名前しか記されませんが、この系図には4人の女性の名前が記されています。4人の女性の共通点は異邦人であることです。マタイ福音書の記者は、4人の異邦人女性の名前を記すことで、イエス・キリストの誕生が、イスラエル民族に留まらない広い枠組みの中で起こったことを伝えています。
 それだけでなく、この系図は、神さまの忠実な僕であり優秀な王であったダビデとダビデ王朝の罪にも触れます。ここに記されているダビデの罪は、ウリヤの妻であったバト・シェバとの不倫と、ウリアの命を奪ったことです。ダビデ・ソロモンと全盛期を迎えたイスラエル王国は北と南に分裂し、北と南の王たちは、主の目に悪とされることを行います。神により頼まずに、偶像を礼拝し、大国により頼みました。やがて、北のイスラエル王国はアッシリアに滅ぼされ、南のユダ王国は、バビロンとの戦争に敗れて、捕囚という民族滅亡の危機を経験します。しかし、ペルシャの王から、帰国が許された人々は長い年月をかけて、城壁と神殿を再建します。系図は、平民のヨセフで終わります。そして、このヨセフと婚約していたマリアから、イエス・キリストが誕生します。
 イエス・キリストの系図は、イスラエル民族の歴史そのものです。個々人の様々な苦難や過ち、民族としての存続の危機にもかかわらず、神さまは、アブラハムとの約束を決して忘れることなく、人々が待ち望んでいたイエス・キリストを誕生させました。マタイ福音書を読む人は、神さまがアブラハムとの約束を実現されたことを知り、さらには、イエス・キリストが世の終わりまで共にいると言ってくださった約束に励まされて、再びイエスさまが来られるのを待つことができるのです。
〔細井留美〕  

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